こんにちは、ArtFuji フォトグラファー Takashi です。
先ず、この写真をご覧ください。2016年7月3日に撮影した超巨大吊るし雲が朝焼けした時の絶景です。
誰もが富士山に現れる吊るし雲の写真を見たことがあると思います。でも、そもそも富士山にできる吊るし雲って何者なのでしょう。
1)吊るし雲ってなんなの?
富士山の山頂に帽子を被ったようにシュッとした雲を見たことがあると思います。これは笠雲と言って、富士山の真上にできます。
吊るし雲は上から見た時に富士山から離れた場所に塊のようにできる雲で、富士山の山頂に強い風が吹いている時にできます。
それは富士山より大きんじゃないかと思うほど巨大だったり、何重にも層をなしていたり、超巨大宇宙船のような円盤状になったり、多くの場合、形はどんどん変化しますが強風に流されることなくほとんど位置を変えることがないのが特徴です。長い時は数時間発生していることもあります。
つまり、富士山から離れたところに形は変わるけど位置が動かない大きな雲があると、それはほぼ吊るし雲なのです。
ところで、この写真の雲は富士山の真上にありますよね。でも吊るし雲なんです。それは、富士山の向こう側にできているので真上にあるように見えているだけなんですね。なので、この写真の左側に回り込んで見ると吊るし雲は富士山頂の左側に離れて浮かんでいるわけです。
2)吊るし雲ってどうして富士山の南側にはできないの?
一般的に吊るし雲は高い山の近くでできるものですが、超巨大な吊るし雲は富士山で特によく見られます。これは、富士山が周りに高い山がない独立峰であるためです。そして、富士山の南側は駿河湾まで裾野がなだらかに続いていて遮るものがほとんどないことも大きな要因なのです。
吊るし雲ができる時は、3000m付近の高さに水蒸気を含んだ強い風が吹いています。この気流は富士山の山頂で押し上げられて大きく波打ちます。富士山頂から少し離れた所にできる一つ目の波が押しあがったところで急激に冷えるため水蒸気が一瞬で水滴になり雲となるのです。気流の波はその後にも連続していますが、一つ目の波で水蒸気が枯れてしまってるので通常雲はできません。なので、高い独立峰である富士山では気流の波も巨大になるので巨大吊るし雲がよく見られるのです。
巨大吊るし雲ができるのは、富士山の北東側で、南西側にできることはほとんどありません。これは富士山のすぐ南が海であるため、水蒸気を含んだ気流が富士山頂付近の高度にやってくるのは、ほとんどの場合南側からやってくるからです。もう一つ高い所では西から東に偏西風が吹いているので、強い気流は南西風の場合が多くなり、それが山頂を越えて北東側に吊るし雲を作るからです。
3)吊るし雲が出ると天気が崩れる前兆って本当?
強い低気圧は大抵西側からやってきます。低気圧は左巻きの風なので、低気圧が富士山に近づくと左巻きの風は海側から吹くことになります。その時に吊るし雲になりやすいのです。
と言うことは、吊るし雲ができる時は低気圧が近づいている場合が多いので、天気は悪くなるということになります。
ただ、必ずではありません。この写真の時は、(過去天気予報を見る限り)この後は晴れでした。